主に細幅鍵盤の事を、個人的な戯言を交えながら徒然なるままに書いているブログです。このブログの趣旨をまとめていますので、初めてお越しの方は、宜しければカテゴリ欄の「記事の概要」をご一読ください。
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MPPA(Medical Problems of Performing Artists)ジャーナルの社説 ~PRMD(演奏関連筋骨格疾患)について~
先月まで翻訳・掲載していたPASK - Pianists for Access to Smaller Keyboards(小さな鍵盤を利用できることに賛成のピアニスト)のサイトが、なんとアメリカの医学雑誌、MPPA - Medical Problems of Performing Artists(アーティストの医学問題)ジャーナルの社説の中で取り上げられたそうです!

『The Keyboard Instruments』
http://www.sciandmed.com/mppa/journalviewer.aspx?issue=1204&article=2039&action=1

Pianists for Access to Smaller Keyboardsのサイトの翻訳文もお読みになりたい方はこちらからどうぞ。

『カテゴリ:PASKのサイト翻訳』
http://littlehands782.blog.fc2.com/blog-category-2.html

こちらも翻訳させて頂きました。
難しい表現も多くて所々読みにくいかとは思いますがご了承ください。




"The Keyboard Instruments"
『鍵盤楽器』

この社説は、5月31日に亡くなった、このジャーナルの創刊者兼編集者、およびパフォーミングアート医学の分野の創始者の1人である、アリス・ブロンフェンブレンナー博士に捧げられます。
彼女の先駆者的研究は、アーティストの健康を改善させるべく、私を含めた私たちの多くを奮い立たせました。彼女は、MPPA.—R.A.M.の1997年6月号における、鍵盤楽器奏者のPRMD(演奏関連筋骨格疾患)の最初の社説のレビューを書きました。

パフォーミングアート医学の分野が創始から30年以上経過している今、私たちは重要なポイントに近づいています。私たちはより強い結論を出すため、いくつかの研究から集められたデータをまとめているより多くの記事に目を向け始めなければなりません。
総説および彼らのより体系化された相対物(メタ分析)は、その主題領域で行われた従来の研究の結果を比較および統合しており、特定のテーマについての私たちの理解を深める助けとなります。これを行うことができるかもしれない1つの方法は、特定の楽器あるいは楽器のグループを演奏することに関連したパフォーマンス関連の問題について行なわれた研究を再検討することでしょう。私は自分でそれをするつもりではないが、他の人がそうすることを望んでいます。
この社説では、そのグループで最も演奏された楽器に焦点を合わせ、1つの楽器グループに関連した、演奏関連の筋骨格疾患(PRMD)の極めて選択的な調査を行います。将来のより正確な調査は、ここで見つかるものとは異なる結論に達するかもしれません。また、より正式な方法で達している結論は何であれ、より高度な確実性を持つでしょう。
鍵盤楽器から始めることはいくらか理にかなっています。
湾曲した弦楽器と並んで、鍵盤楽器はこの28+年の間MPPAで発表される最も多くの記事のテーマであり、50を超える記事が各グループで掲載されました。
しかしながら、パフォーミングアート医学協会の文献[1]を見ると、湾曲した弦楽器(400未満)より、鍵盤楽器(600以上)ではるかに多くの項目を目にします。更に、鍵盤の記事はほとんど全てがピアノに基づいていますが、その一方で、湾曲した弦楽器の記事は、バイオリン、ビオラ、チェロおよびコントラバス(一般的な弦楽器のいくつか)の中でより均一に分散しています。
従って、ピアノが主な焦点になるであろうことを認識し、鍵盤楽器をこの社説の話題として選ぶことがより分かりやすいのです。

このような次第ではありますが、私たちは鍵盤楽器の全グループの概要から始めなければなりません。
音楽学者は、鍵盤楽器をクラヴィコードハープシコード、およびピアノなどの弦楽器、パイプオルガンやアコーディオンなどの気鳴楽器、チェレスタカリヨンなどの体鳴楽器、そしてシンセサイザーや電子オルガンなどの電子楽器の4つのグループに分類しています。
ピアノ以外のどの鍵盤楽器も、演奏することと関係しているPRMDに関してほとんど書かれていません。注目に値する例外は、アコーディオンおよび関連する楽器に注目している、リンダ・グリフィス[2]による本、Playing Wellです。その中で彼女は、ほぼ600人のアコーディオン奏者、コンサーティーナ演奏者およびバンドネオニストに関する調査の結果を報告し、彼らの33%がある時期にPRMDを経験した(多くの古典的な楽器より低い生涯有病率と思われる)と報告しました。負傷した演奏者は、無傷の演奏者(平均6時間、3~8時間の範囲)よりも僅かに多い、1週間当たりの練習や演奏の時間(平均8時間、6~11時間の範囲)を報告しました。これは毎週演奏する多くの古典的な楽器に関する場合より少ない量でもあります。
私は、特にオルガン奏者の中でのPRMDの頻度に関するいかなる公表された研究も見つけることができませんでしたが、1つの大学レベルの音楽学校における負傷発生率の、長期にわたる私たちの研究からのデータ[3]を検討する価値はあります。
その中で、私たちはピアノの上肢PRMD率(負傷13.1人/演奏の専攻学生100人/年)が、オルガンの負傷率(7.2人)より遥かに高いことが分かりました。この理由は不明であり、調査結果は他のところでは再現されていません。鍵盤、およびペダル音や他の要素を練習しながら上肢を休ませる機会の違いについて推測することが出来ますが、私たちはオルガン奏者に関するデータをまだ持っていません。これは将来の研究のための有益な分野であるかもしれません。

幸いなことに、私たちはピアニストのPRMDに関する多くの研究を持っています。それらを全て洗い直そうとはしませんが、私が重要であると思う2、3にスポットを当てたいと思います。
歴史的観点から始めて、酒井医師は北アメリカ、ヨーロッパ、および日本のいくつかの博物館の、120台の古い鍵盤楽器の鍵盤のスパンを測定しました[4]
彼は、平均の鍵盤幅が1700年代の終わり頃に減少し、次に1800年代の終わり頃に現代のサイズに増加したことを発見しました。つまり、クラシックのピアノ・レパートリーの多くが、今日の殆どのピアノに見られるより狭い鍵盤を備えていたピアノで、そしてそのピアノのために作曲されたということです。
上記の長期的な発生率研究を含む多くの研究[3]によって、女性ピアニストは、男性よりPRMD率が高いということが示されています。この数年間、僅かに狭いピアノ鍵盤の使用への関心の高まりを目にし、これが負傷する確率を下げる結果をもたらすという予備的証拠[5]があります。
詳しい情報は、Pianists for Access to Smaller Keyboardsのウェブサイト[6]で入手できます。
ピアニストに関するいくつかの研究論文はMPPAで発表されました。それらは、それらの結果の分かりやすい編集を可能にする目標母集団や方法論の類似が十分ではありませんが、調査結果を調べることは興味深いです。
ここに、3つのより大きなシリーズが評価のために選ばれます。言うまでもなく、他のものはMPPA、および他のジャーナルで公表されてきました。
最も大きなシリーズは、北テキサス大学の演奏家健康調査(インターネットを利用したアンケート)[7]からです。
ほぼ男女均等の約450人のピアニストが答えました。回答者のほぼ75%は21歳から50歳の間でした。大部分は1日に3時間未満練習し、10%未満は1日に5時間以上練習していました。全体的に見て、59%がPRMDを患っていたと報告しました。若年および女性はPRMDを患うことに関係していましたが、毎日の演奏時間と演奏される音楽のタイプはPRMDの危険性と関連していませんでした。
酒井医師の、手の痛みを伴う200人のプロ・ピアニストあるいはピアノの学生(ほとんど女性)の報告書[8]が2002年に公表されました。平均年齢は18歳から66歳までの範囲がある26歳で、彼らは症状の発現(2~13時間に及ぶ)の前に、1日に平均でおよそ4時間の練習をしていると報告しました。診断は、神経障害の28の症例を伴う筋骨格系の領域が中心でした。70人の対象者は、彼らの症状の発現の前後に様々な鍵盤テクニック(通常オクターブやコード)の練習をしていると報告しました。
他の大きなシリーズは、2006年に古屋と同僚によって発表されました[9]。その中では、高校レベルおよびそれより上級レベル(年齢の範囲 15~60歳)が調査を受けました。
平均の日常の練習時間は、大学生(180分)が年下や年上の参加者(150分)よりも多く、77%が上肢および上幹にPRMDを患ったと報告しました。
この研究は、(自己申告の)過度の筋肉緊張の部位と、同じ領域でのPRMDの発生との間の相関関係を示しました。

ところで、私たちは鍵盤楽器の演奏からPRMDを発症する危険性について何を知っているでしょう。
アコーディオンまたはオルガンを演奏するよりピアノの演奏が危険であるようですが、私たちにはより多くの日常の練習時のデータが必要です。
女性はピアノの演奏からPRMDを発症する危険性が高いようです。しかし私たちは、狭い鍵盤をより利用できるようにすることによって、この危険性を減らすことが出来るかもしれません。
ピアノ研究文献全体のより正確な調査が緊急に必要とされます。ピアノは、最も高く関連するPRMD率の1つを持った、最も一般的に演奏される楽器の1つであるので、これはパフォーミングアート医学の分野にとって最優先のことであるべきです。


ラルフ・A.・マンチェスター博士
MPPA編集長
ニューヨーク州、ロチェスター
rmanchester@uhs.rochester.edu


1. パフォーミングアート医学協会:参考文献
www.artsmed.org/bibliography

2. パフォーミングアート医学、3番目の編集長
ペンシルベニア州、ナーバース:科学と医学 2010

3. ケーヤ・D、マンチェスター・R
音楽学生の上肢傷病の楽器別の率
MPPA 1998; 13:19

4. 酒井直隆
古い楽器の鍵盤のスパン
2008年、MPPA 2008; 23:169

酒井直隆氏の鍵盤幅測定に関する記事はこちらです。
http://littlehands782.blog.fc2.com/blog-entry-27.html

5. オーストラレーシアピアノ教育学会議2013
www.appca.com.au/
2013 proceedings. php.

6. Pianists for Access to Smaller Keyboards [ウェブサイト]
www.paskpiano.org

7. パック・CH、チェスキー・K
鍵盤演奏家の手、指、および手関節の筋骨格系の問題の有病率
MPPA 2001; 16:17

8. 酒井直隆
プロ・ピアニストの間の酷使に起因する手の痛み
MPPA 2002; 17:178

9. 古屋晋一、他
日本人ピアニストおよびピアノの学生の間の上肢および上幹の演奏に関連する筋骨格疾患の罹患率と原因となる要素
MPPA 2006; 21:112


MPPA June 2014; 29(2):55–56.
c 2014 Science & Medicine, Inc.
www.sciandmed.com/mppa




細幅鍵盤や鍵盤と手の大きさの問題もようやく然るべきところに認知され始めたのかもしれませんね。
恐らく今後、この問題に医学の方面からメスが入れられ、それが普及の切っ掛けになってきそうな気がします。


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