主に細幅鍵盤の事を、個人的な戯言を交えながら徒然なるままに書いているブログです。このブログの趣旨をまとめていますので、初めてお越しの方は、宜しければカテゴリ欄の「記事の概要」をご一読ください。
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PASK記事翻訳 - Part5 * 鍵盤の歴史・手のスパンのデータ分析
今回からいよいよ本題です。
前回の記事で示した6つの項目の中の、「1. ピアノ鍵盤の歴史」「2. ピアニストの手のスパンのデータの分析」の翻訳を掲載させて頂きます。




"1. The history"
『1. 歴史』

1880年代以前には、ピアノの鍵盤は今日より一般的に小さかったのです。異なるサイズが利用可能でした。
女性に適するものとして具体的に売り出されたピアノがありました。

しかしながら、1800年代後半に、フランツ・リストのような当時の有名なヨーロッパの巨匠の演奏に聴衆を集めるための大きなコンサート・ホールが建設されたことによって、ピアノの売り上げを増やすためのピアノ・メーカーによる圧力がありました。
これらのホールは、より大きく、より強力な楽器を必要としました。

19世紀後半の男性の巨匠のために、残りの人口のニーズに対する検討がなされることなく設計された鍵盤構成が、今日私たちが持っているものです。

幸いにも、過去10年ほどの間、米国の1つの小規模なメーカー(スタインビューラー社)は、狭い鍵盤の必要性を認め、販売を促進しました。とりわけ、それらに、小さな手に人間工学的に適している鍵盤を取り付けている間、モダン・ピアノの完全な音を生かすことができます。この「改造」は、彼らの楽器の音に違いを生じない88個の狭い鍵盤をピアニストに与えます。
委託で小さな鍵盤を製造する他のメーカーは、スタインウェイとカワイを含みます。(参照: ACCESSING REDUCED SIZE PIANO KEYBOARDS - 縮小されたサイズのピアノ鍵盤へ近づく方法Manufacturers of keyboards with narrower keys - より狭いキーを備えた鍵盤のメーカー)

このように、徐々に、しかし、非常にゆっくりと、ピアニストは選択の権利を得ています。私たちは、女性、十代の若者および子どもが(大人の)男性の服を着る、若しくは、同じ大きさの自転車に乗る、または、大きいスキーの上でスキーをするのでもなく、それにまた、それこそ同じ大きさのバイオリンまたはチェロを演奏するとは期待しません。
私たちはすべて、それらすべてのもののためのサイズの選択権を持っていて、どうして私たちにはピアノの鍵盤のためのサイズの選択権もないのでしょうか。

参照: www.smallpianokeyboards.org/keyboard-history.html


"2. Hand span data"
『2. 手のスパンのデータ』

男女の間の手のサイズの変化は重要であり、子どもが含まれている場合、それはさらに大きいです。

利用可能なデータは、成人男性の手のスパンは、平均して成人女性よりおよそ1インチ(または2.5cm)大きいことを示しています。これは、男性が現在の鍵盤上の1個以上の余分な白鍵に平均的に達することができることを意味します。

重要な測定ポイントは8.5インチ(21.6cm)の手のスパンです。このポイントまで、ピアニストは10度を演奏しようと努力します。利用可能なデータから、成人男性の80%が8.5インチ(21.6cm)以上伸ばすことができる手のスパンを持っていると推測され、これは10度を演奏できない20%の男性(わずかではない割合)を見捨てています。
女性にとってはそれが逆で、実際はそうすることができない80%と共に、10度を演奏するのに十分な大きな手の成人女性が、わずか20%しかいないことが推測されます!

一般的により小さな手の一部の人種は、更に不利な条件に置かれています。子どもは明らかにそうです。高齢者は彼らのスパンが年齢と共に縮小すると気付くかもしれません。




“リストは手が大きかったから指が10度以上届いていたらしい”という話は有名ですが、これはリストの手がたまたま大きくて10度届いていたのではなく、モダンピアノが開発された頃に、リストなどのような手の大きなピアニストがたまたま活躍していた関係で、モダンピアノの鍵盤幅が彼らにとって弾きやすい大きさに最初から設定されてしまった、という経緯のようですね。
殆どの方が信じている、“この鍵盤が誰にでも弾きやすい大きさ”という話は完全に間違いだということです。

平均以上に大きな手のピアニスト向けに設定された規格なのですから、当然、世の中の殆どの人にとっては大きすぎるわけです。それを、「手が小さくても弾けなければならない」というのはあまりにもナンセンスだと思いませんか?

なぜ10度かというと、ピアノ曲を正しい弾き方で譜面通りに弾くには、手をめいっぱい広げた状態で最低でも10度届く必要があるからです。
なぜ譜面通りに弾けることを基準に考えているかというと、コンクール(特に海外の)では、譜面通りに正確に弾くことが基本とされているからです。つまり、工夫した弾き方では通用しないということです。

手のスパン(手を広げた状態での親指から小指までの幅)のデータを見る限り、女性の殆どがこの条件をクリアできない、つまり、非常に限られた人しかピアノで上を目指すことが出来ないことを意味しています。
しかもこのデータは欧米で集められたものです。この中にアジア人のデータも無いわけではないと思いますが、この調査をもし日本で実施したら・・・果たして10度届く人が男性でも8割も居るのでしょうか。これが女性だったら・・・おそらく受け入れがたい結果が出てしまうかもしれませんね。

中田喜直さんの本「音楽と人生」の中でも、ピアニストの宮沢明子さんが、

“小柄な日本人には現在のピアノは合っていない。プロになれる人は十万人に一人位”

と言っていた、とありますし、オーストリアの世界的ピアニストのパウル・バドゥラ=スコダ氏も、

“私の生徒の半分は、手が小さくて、音楽的に和音が弾けないことが多い。多くの人にとって、今の鍵盤は広すぎる。鍵盤の幅は音楽と無関係なのです。だから、楽器のサイズは人間のために考えられるべきでしょう”

と話し、鍵盤の幅をもっと狭くすることを提唱しているそうです。

手の大きなピアニストに弾かせるため、大きなホールにどんどん導入されて、確かにそのときはピアノの売り上げが上がったのかもしれませんが、それは目先の利益でしかなく、そのあと多くの人が弾くことを考えなかったために、結局はピアノ産業の衰退を招いてしまったとは、何とも皮肉な話ですね。

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