FC2ブログ
主に細幅鍵盤の事を、個人的な戯言を交えながら徒然なるままに書いているブログです。このブログの趣旨をまとめていますので、初めてお越しの方は、宜しければカテゴリ欄の「記事の概要」をご一読ください。
10 * 2018/11 * 12
S M T W T F S
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
03/18
細幅鍵盤と初めて出逢った、あるアメリカ人女性の話
先日、日頃から連絡を取り合っているオーストラリアの方から、とあるアメリカ人女性から来たというメールが転送されてきました。
そのメールはかなりの長文で、言いたいことが止め処なく溢れてきているといった感じでした。
なかなか興味深い内容でしたので、かいつまんでご紹介させていただきます。


そのメールの方は、ご自身のことを“人生の秋(the autumn of my years)”と仰っているので、恐らく年配(60代か70代くらい?)の方ではないかと思います。
5歳からピアノを始められたそうで、現在は地元のピアノ・サークルに通いながら趣味で弾いているそうです。
この方の手の大きさに関して正確な数値は書かれていませんが、Hand span dataにあるこの図(←クリック))の中で、ご自身の手は赤い点が1つか2つしかない極端な端っこだと仰っているので、恐らく手のスパン(広げた手の親指から小指までの幅)が17cm程度なのだと思います。
ちなみに私もこのくらいなのですが、これだとオクターブもまともに届かず、届いても白鍵の内側の角に手前から辛うじて指先を引っかけている状態になります。鍵盤の側面で指を広げながら無理矢理オクターブを押える格好になるので、オクターブの連打はまず出来ません・・・

細幅鍵盤のことをどうやってお知りになったかというと、インターネットで偶々所有者の方(のブログか何か?)を見つけられたらしく、しかもその方がご自身の自宅から車で2時間くらいのところにお住まいになっていることも分かって試弾にも行かれたそうです。

その所有者の方から色々とお話しも伺ったそうですが、その方は

「例え(標準鍵盤で)弾ける曲があったとしても、もう1つある普通の鍵盤には全く触れるつもりは無いし、そうしたいとも思わない。」

ということを強調していたそうで、この言葉には困惑したそうです。
ただ、細幅鍵盤での弾き心地を知った今となっては、この方自身もそういう心境になっているそうですが・・・

この方は最初から細幅鍵盤に肯定的ではなかったようで、最初に細幅鍵盤のPRサイト(http://www.smallpianokeyboards.org/http://www.paskpiano.org/)を読んだときは、その内容に懐疑的で、細幅鍵盤の効果についても過度に誇張しているのではないかと疑っていたそうです。
細幅鍵盤を弾いてみるにしても、このサイトに書かれていることが事実かどうかを1つ1つ確かめてみようという姿勢だったようです。
長い間疑っていたそうですが、今では本当だったとご納得され、ご自身のスタインウェイBに取り付けるためのDS5.5鍵盤を購入されています。

PRサイトの中でこの方が特に気に入っている内容は、スタインビューラー鍵盤の共同開発者、クリストファー・ドニソン氏の“大きな秘密”の部分だそうで、その通り(How true!)だと仰っています。

『ピアノの演奏の世界には2つの大きな秘密があります。1つ目は、より大きな手で弾けば、楽器の演奏がどれほど格段に容易になるかということ、そして2つ目は、それが小さい手だと、どれほど不可能になり得るのかということです。もし世界をより小さな手の半分と、より大きな手の半分の2つの構成要素に分けられるとすれば、より大きい手の半分が、より小さい手をした相手の困難が何であるかを真に理解することはなく、そして、より小さな手の半分が、大きい手によって、すべての困難がどれほど少なくなるかということに真に気付くことはないということが分かります。・・・・・その秘密が露呈するだけの高難度な曲に挑むよりもずっと前から、「手が大きいピアニスト」の手はとっくに十分な大きさになっているのですから。』
クリストファー・ドニソン(Christopher Donison)、ミュージック・バイ・ザ・シー(Music by the Sea)、エグゼクティブアートディレクター(Executive Artistic Director)、カナダ・ブリティッシュコロンビア州、2000年、p.111。

この方が実際に購入を決断する前には、やはり幅の違う鍵盤にちゃんと適応できるのか、標準鍵盤に戻るときにはちゃんと戻れるのかという問題に直面したそうです。
そしてこの問題、細幅鍵盤のことを初めて聞く方から大抵一度は言われる事だったりもします。

細幅鍵盤で最低限自分が求めるレベルまで弾けるようになるのに1時間から2時間以上かかったとのこと。
これについて、1つはご自身の年齢、もう1つは、ご自分の小さな手が長年に渡って極端な指の位置で頑張ってきたために、その筋肉の動きの記憶が脳に染みついていて、そこから調整するには脳の記憶を大きく修正しなければならなかったせいだろうと、ご自分なりに分析されています。
この方ご自身は長くかかったと思っているようなのですが、これまで細幅鍵盤に移られた方々の話を聞く限りでは、だいたい皆さんもこれくらいかかっている感じです。

細幅鍵盤を弾いてみたことでご自身の記憶力の衰えを実感して驚いているそうで、こんなこと若い人には無いんでしょうね~みたいに仰っていますし、DS6.0(15/16)鍵盤で丁度良いと感じるような手の大きさの人たちと、極端に小さい手の自分とでは、慣れるまでに感じるギャップにも違いがあるだろうとも仰っています。

色々と思うところもあったようですが、疑いながらも実際に使ってみて、ご自身の目(手?)で確かめてみようとする姿勢がすごいなと思います。
何事もそうですが、やっぱり“百聞は一見にしかず”ということなんでしょうね。

そんなこんなで、手の大きさに合った鍵盤を使うことの利点を理解された後、この方はご自身の通うピアノ・サークルでこのことをお話しになったようです。
ところがそこで、あからさまに無関心で冷たい態度を取られてしまってがっかりさせられたとのこと。
この問題の深刻さをサークルの人たちは全く理解してくれず、これを受け入れることを拒む上に、「標準鍵盤と細幅鍵盤とを交互に切り替えることなんて出来やしない」という“壁”を盾にとって、このことに関心を持たないよう、この方までも誘導しようとしてきたとのことでした。

サークルには15/16の鍵盤を弾いたことのある方もいらっしゃるそうですが、その方もやはり、

『自分の標準鍵盤のピアノでは決して出来ないかもしれないと思うことが、15/16鍵盤だと出来るのだろうとすぐに分かったが、そもそも自分の細幅鍵盤ピアノに慣れてからどうやって他の人のピアノを弾くか?そしてそもそもどうやって他の人が自分のピアノを弾くのか?というのが大問題だった。』

と仰っていたそうです。

この部分を読んだときにはかなり意外な感じがしました。
日本の支持者の方の中にも、細幅鍵盤のことを知り合いの音大生やピアニストの方々にお話になったという方がいらっしゃるのですが、この方から聞いた話とこのアメリカ人女性の話の内容がほぼ同じだったからです。
これまで、こんなに理解が無いのは全体主義で同調圧力の強い日本くらいなのだろうと思っていたのですが、もしかすると状況は欧米でも大して変わらないのでは・・・そう考えると、この活動に対する日本と海外の温度差は、環境の違いと言うより“度胸”の違い???

このアメリカ人女性は、今の心境について以下のように仰っています。

『これはとてつもなく意味の深い、人生を変える旅なのです。人生の秋に入ってしまっているからには、何年もくよくよ考えないようにするつもりです。身体的に不可能なことをしようとしていて、気が遠くなるほどの時間が無駄になってしまったのですから!私が教わった先生の中には、私に「素晴らしい才能がある」と言ってくれた人もいましたが、誰も正直に、わざわざ親切に本当のことを教えてくれる人はいませんでした。なので私は鍵盤を叩き続ける一方でした。自分の新しいDS5.5鍵盤で最初に手掛けたことの1つは、ラフマニノフの作品3と2の、ボロボロだった2小節のパッセージを成し遂げることでした。何百時間もの訓練をしたのですが・・・それを習得するのに、DS5.5鍵盤だと20分くらいしかかかりませんでした。その無駄な努力に、私は危うく腹を立てるところでした。』

『私は今レパートリーの見直し中ですが、ESPK(※)の影響を受けるとは思ってもみなかったことにたくさん気付いています。自分が見つけ出すことができなかった本当の音楽がどれほど多かったか、そして当然のこととしてやっていた音符の削減や変更がどれほど多かったかにショックを受けました。プロのアーティストの手や、シェイピングや、動きに何度も畏敬の念を抱きながら見つめていただけに、自分の手を見ていて時々それがプロのアーティストと同じ形に見えることに驚くばかりです。

『自分の心と指でよりいっそう「揺るぎないもの」になるまで、当分の間はESPK(※)に留まっています。通常の鍵盤で何が起こるかは分かりませんが、もはやそれはどうでもいいことです。現実には、自分が以前は大きなものを弾くことができなかったということ、もっと鍛錬と練習が必要だと自分に言い聞かせながら自分自身をたくさん騙してきたことで長い間隠されていた真実を、今は理解しています。』

ESPK - Ergonomically Scaled Piano Keyboard(人間工学的にスケーリングされたピアノ鍵盤)


ピアノ ブログランキングへ
にほんブログ村 クラシックブログ ピアノへ
にほんブログ村
スポンサーサイト
コメント

管理者にだけ表示を許可する
 

トラックバック
トラックバック URL

Copyright © 2018 細幅鍵盤随想記|ピアノと鍵盤と、時々、戯言.
all rights reserved.