主に細幅鍵盤の事を、個人的な戯言を交えながら徒然なるままに書いているブログです。このブログの趣旨をまとめていますので、初めてお越しの方は、宜しければカテゴリ欄の「記事の概要」をご一読ください。
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09/06
なぜ日本メーカーは新市場を開拓できないのか ~「水道哲学」から「ニーズの断捨離」へ~
このブログを読んで下さっている方の中には、細幅鍵盤に興味をお持ちになり、欲しいと思うようになられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ですが、現在のところ細幅鍵盤ピアノは、“相当に高額なアコースティック”、しかも“国内で買えるのは15/16程の幅1種類のみ”で、“他の幅を買いたい場合はアメリカからの輸入”という形でしか手に入れることが出来ません。
他にも、“置く場所や騒音の問題”などからアコースティック・ピアノ自体を選べないという方も少なくないですね。
このような条件では、いくら欲しいと思っても手に入れられる人はごく僅かでしょう。


「細幅鍵盤の電子ピアノ(キーボード)」
※88鍵盤のもの


細幅鍵盤が欲しいと思っている方(私も含めて)にとってはぜひあってほしい商品ではないでしょうか。


私はこれまでに、「細幅鍵盤の電子ピアノがあればいいのに」という話を何人かにしたことがあります。すると皆さん一様に驚かれます。“細幅鍵盤”という考え方にではなく、細幅鍵盤の電子ピアノが無いことの方に驚かれるのです。鍵盤幅の細い電子ピアノぐらいあってもおかしくないと感じていらっしゃるようです。

ネットでも、“細幅鍵盤”や“手が小さい”などのキーワードで検索をかけていくと、「細幅鍵盤の電子ピアノ(キーボード)」を望む(探す)書き込みを度々目にします。
そしてスタインビューラー社のサイトの中にも、「興味深いことに、私たちがお受けする問い合わせの多くは小さな電子鍵盤楽器のご要望なのです。」と書かれています。(米国での細幅鍵盤のパイオニア、スタインビューラー社の歩み - Steinbuhler & Company(和訳)

売り出されればすぐにでも買いたいと思っている人は確実に存在するのです。

なのに、未だどこのメーカーも発売しようとしません。その理由によく “需要の少なさ”が挙げられます。
確かにまだまだ認知度や理解度が低いことは事実。望む声があるとはいえ、現時点ではそのユーザー数は限られるでしょう。


この問題に一石を投じそうな面白い記事を見つけたので、今回はそちらをご紹介したいと思います。
「細幅鍵盤の電子ピアノ(キーボード)」について考える上でのヒントが見つかるかもしれません。


『なぜ日本メーカーはルンバをつくれない?「ニーズの断捨離」で新しい常識と顧客を創造』

『日の丸掃除機、敗戦の日 国内新市場を席巻する海外メーカー』
(↑ここではスマホ版の記事をリンクしています。パソコン版は全文を読むのに無料会員登録が必要ですが、スマホ版は会員登録無しで全文読めます。)


今やお掃除ロボットの代名詞にもなっている、アメリカ、アイロボットの「ルンバ」
掃除の常識や概念が変わってしまったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

アイロボットの日本国内での市場拡大はめざましいそうで、ロボット掃除機の国内シェアの大半をアイロボットの製品が占めているそうです。そしてこの傾向は今後も続くと予想されています。
国内大手メーカーもアイロボットに続いてロボット掃除機を販売しているそうですが、数パーセントのシェアしか握れていないとのこと。

恐らく“ロボット掃除機=ルンバ”というイメージが既に世の中に定着してしまっているからなのでしょう。

今年の7月1日には、「ルンバ」のアイロボットが新たに水拭き掃除機の「ブラーバ」を発表。「靴を脱ぐ文化のある日本では、床をきれいにしておきたいというニーズは世界に比して高い」と日本での販売に自信を見せているそうです。


アイロボットのみならず、サイクロン掃除機で知られるイギリスのダイソンも、2013年9月に充電式のコードレススティック型掃除機を発売し、好調とのこと。
韓国のレイコップのハンディ型布団クリーナーも、2012年2月の日本での本格的な販売開始以来、日本での販売台数はすでに累計150万台以上となっているそう。

掃除機だけでなく、油を使わず熱と空気で揚げる揚げ物調理器、ノンフライヤーで知られるオランダのフィリップスが、今年の6月から販売を開始した家庭用自動製麺機、ヌードルメーカーも話題になっていますね。

海外メーカーが続々と目新しい商品を打ち出してきている中で、日本メーカーはそれに追従しているという構図になってきています。


そんな日本にもかつてはこのような事例が。

真空管ラジオ全盛の1950年代にソニーがトランジスタラジオを開発し、それまでの「ラジオは自宅の居間で聞く」という常識に挑戦し、「野外で聞く」という新しい常識を作り出し、若者リスナーを生み出したとのこと。

家電だけでなく、1989年にマツダから発売された2人乗りオープンスポーツカー、ロードスターも、発売初年には国内で9307台を販売、翌年は世界で9万3626台を販売してスポーツカーとしては大ヒットとなり、この成功を受けて、MG(MGF)フィアット(バルケッタ)BMW(Z3)メルセデス・ベンツ(SLK)といったメーカーが小型オープンカーを発売し、消滅しかけていたと思われていたライトウェイトスポーツカー市場が活性化されたという事例もあります。
今月には、4代目となる新型のロードスターを、日本、米国、スペインで行われたファン参加型イベントで世界初公開したそうですね。


技術立国日本。決して技術力が劣っているわけではないのに、近年、このように海外製の家電製品が台頭してきているのはなぜなんでしょう。


ある国内大手メーカーの開発担当者の(ため息交じりの)言葉があります。

「あまりに慎重すぎるんですよ・・・」

ロボット掃除機に関しては、国内大手数社が発売しているものの、いまだにその危険性を危惧する国内大手メーカーも少なくないとのこと。

「人の目の届かないところで何かにぶつかり、物を壊したり割ったりした場合どうするのか。」
「仏壇のろうそくを倒してしまい、火事にでもなったらどうするのか。」


そうした「性悪説」にたった議論を喧々諤々としているうちに、答えが出ず、商品化に至らないのだと言います。


ロボット掃除機を発売していない他の大手メーカーの企画本部長もこう本音を漏らしているそう。

「すべてのお客様に満足のいくものを、と考えると先回りができず、いまだ商品化に至れていない。アイロボットやレイコップの快挙を真摯に反省すべき。自分たちの強みを活かし、引き算の発想をしなくてはいけない。(日本企業の製品に見られるように)多くの人に向けて、何でもできる、という製品ではもう市場を開拓できない。」

確かに危険性に関して慎重に考えるのは大事なことですが、上のようなことは取扱説明書の「使用上の注意」で注意喚起をすればいいだけのことのように思えます。このようなことを商品化できない理由にしているという態度から、もしかして “掃除をロボット任せにするなんて・・・”という偏見をメーカー側が持っているんじゃないかと勘ぐってしまいますね。
せっかくの高い技術力も、これでは宝の持ち腐れになってしまっています・・・。


“すべてのお客様に支持されるものでなければならない”という考え方が、あたかも「新製品を売り出す上での基本」であるかのように言われることが多いですが、『日の丸掃除機、敗戦の日』の記事では、それが「日本らしい」考え方だと述べられていますね。
そして、『なぜ日本メーカーはルンバをつくれない?』の記事の中では、この考え方の源流にあるのは、松下電気器具製作所(現パナソニック)創業者の松下幸之助が提唱した「水道哲学」の考え方だと述べられています。

「産業人の使命は貧乏の克服である。(略)産業人の使命も、水道の水の如く、物資を無尽蔵にたらしめ、無代に等しい価格で提供する事にある。それによって、人生に幸福を齎し、この世に極楽楽土を建設する事が出来るのである。松下電器の真使命も亦その点に在る」

貧困を克服し極楽浄土をつくるという使命を胸に、家電商品を安く大量に供給しようと考え、1932年にこの「水道哲学」を提唱したのだそうです。

この提唱がなされたのは82年前。まだまだ日本が貧しかった頃の話です。今では水道の水も決して安くはありませんから、その辺からも時代を感じさせますね。
現在の日本は貧困を克服し、モノがあふれ、水道哲学で述べられた使命はすでに達成されたと言っていい状況になっているのですが、家電メーカーに限らず、多くの日本企業で「信頼性が高く多機能な商品を、安く大量に」という考え方から脱却できていないのだと言います。

この考え方に支配されているために、市場の10%でもいいから熱狂的に支持する顧客がいればいい、という一点突破型の考えになかなかたどり着けないのだそう。


ルンバを開発・販売するアイロボットは、この考え方にこだわっていないそうで、「ニーズの断捨離」で新しい常識をつくり、新しい顧客を創造しているとのこと。
「すべての人へ、安く多機能を」と考えずに、「5%の人へ、高くても光るモノを」と考え、市場ではごく一部だった顧客のこだわりに応えて、急速に成長しているのだそうです。
そして、商品の性能向上に伴い、いつの間にかそれが市場の5%にとどまらず、市場の過半数を押さえてしまっている状況になっているということです。

以前テレビで、「日本では“おしゃべり機能付き”のロボット掃除機が発売されましたが。」というリポーターからの問いかけに対して、アイロボットの社長(社員だったかな?)が、「掃除機と会話したい人なんて居るのかい?消費者のニーズが何なのかをもっとよく考えるべきだ。」と半ば呆れながら答えているのを見たことがあります。

確かに、放っておけば掃除をしてくれるロボット掃除機を使う人というのは、多くが忙しい人でしょう。
スイッチを入れたらすぐ外出、というような使い方をしているかもしれませんし、少なくともロボット掃除機にずっと付き添っている人はそういないでしょう。そのような人がロボット掃除機とおしゃべりをしたいと思うでしょうか。
そう言えば、「必要だとも思えないような機能をやたらと付けたがるのは、消費者のニーズを考えてのことではなく、自分達の技術力を示そうとしているからだ。」という話を以前どこかで聞いたことがありますが・・・。


国内大手メーカーには、ロボット掃除機の市場を「たかが5%」と見る向きも少なくないそうですが、ダイソンがサイクロン式を発売してから10年以上かけて他社の追従を生み、市場の2割以上を獲得し、その後発売されたスティック型やハンディー型でも同じような現象が起きていることから、アイロボットもブラーバの投入をきっかけに、今後そのシェアを大きくする可能性は少なくなく、その勢いは決して馬鹿にできるものではないと述べられています。


確かに、「細幅鍵盤電子ピアノ」に限らず、欲しい人がいるはずなのになぜか商品化されないモノって結構ありますよね。
昔と違って、今は誰もが必要とするようなモノはほとんど行き渡っていますし、価値観やライフスタイルも変化し、人々の嗜好も多様化しているので、「すべての人へ」という考え方ではもはや通用しなくなっているのかもしれません。


“一点突破型”の代表格とも言えそうな商品、家庭用自動製麺機のヌードルメーカー。
現時点では麺を自宅で作る人はほとんどいないかもしれません。
ですがフィリップスは、「消費者が気づかない潜在ニーズは大きい」と考え、「麺は買うもの」という常識に挑戦し、「麺は自宅でつくる」という新しい常識を掲げ、市場創造に挑戦しているとのこと。


今ある“常識”や“価値観”を変えてしまうほど斬新な商品というのは、受け入れられるまでにある程度の時間がかかることが多いですし、ともすると批判的な見方をされてしまうこともあります。
洗濯機がその良い例かも知れません。
昭和22年頃に本格的な国産の電気洗濯機の生産が始まったそうですが、当時の庶民にはとても高価だった上に、「だらしない女が機械に洗濯をさせるのだ」という風潮もあって、すぐには売れなかったのだそうです。
それが今では洗濯機を使うのが当たり前になっていますね。


「技術はあるのに使えないニッポン」

残念なことに、そう揶揄する声が海外からじわじわと聞こえ始めているそう。


新しい商品を開発するには、技術力だけではなく、今までの常識に挑戦する勇気や気概も必要なのでしょう。
そして、かつての日本にはそれがあったのかもしれないと思う製品に、「ヤマハの二段式ピアノ」というものがあります。

動画の説明文にもあるように、約75年前にヤマハが製造し、数年前に復元されたそうです。
ピアノ教室に細幅鍵盤ピアノを導入しようと考えたとき、問題となるのは“費用”と“置く場所”ではないでしょうか。
このピアノならアップライト1台分の場所で標準鍵盤と細幅鍵盤の両方を用意することが出来ます。お値段がおいくらぐらいするのかは分かりませんが、ピアノを丸ごと複数買うよりは低予算で済むかもしれません。

↑※
この動画は現在は削除されています。
このピアノは浜松市楽器博物館に寄贈されたとのことです。


こちらは二段式ピアノの関連記事です。

http://8107.teacup.com/hosohaba/bbs/60


そして注目すべきは、下の段の細幅鍵盤が引き出しのように引き出したり引っ込めたりできるという点です。このようなことができるということは、うまくすれば取り外せるようにもできるかもしれませんし、他の幅の鍵盤にも取り換えられるかもしれません。もしそうなれば鍵盤幅のバリエーションも増やしやすくなりますね。
細幅鍵盤開発の先駆けであるスタインビューラー社でさえも、“アップライトでは鍵盤の取り換えができない”としていることから、そのような「細幅鍵盤付け替え式のアップライトピアノ」が実現すれば、先ずは日本に比べて細幅鍵盤への関心が高い海外からかなり注目されるでしょう。
こんな素晴らしい製品を造れる技術がありながら埋もれさせているなんて勿体無い!


記事の冒頭で書いた「細幅鍵盤の電子ピアノ(キーボード)」も、幸い今はまだどこの国からも発売されていません。
「二段式ピアノ」と共に、名誉挽回の切り札になるかも知れませんよ。

ですが現在、アメリカ人男性が、15/16鍵盤の電子ピアノを中国のメーカーに造ってもらうよう取り組んでいるのだそうです。
そうでなくても細幅鍵盤への関心が少しずつ高まっている昨今、細幅鍵盤の電子楽器がどこかの国から発売されるのは時間の問題かもしれません。


既成概念に切り込む商品であればあるほど、最初に発売された商品が強烈なイメージを植え付けて“代名詞”となり、後続メーカーが太刀打ち出来なくなる傾向があるように思います。

世界に先駆けて発売し、“代名詞”の座を射止めるのか・・・
それともロボット掃除機の二の舞となってしまうのか・・・
果たして、日本はどちらに転ぶのでしょうね。


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