主に細幅鍵盤の事を、個人的な戯言を交えながら徒然なるままに書いているブログです。このブログの趣旨をまとめていますので、初めてお越しの方は、宜しければカテゴリ欄の「記事の概要」をご一読ください。
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細幅鍵盤を使っているピアニストの方々の証言 - ALTERNATIVELY SIZED PIANO KEYBOARDS(和訳)
2016年の終わり頃に、細幅鍵盤関連の英語サイト、ALTERNATIVELY SIZED PIANO KEYBOARDS内が大幅に編成し直されました。
それに伴い、このブログでもこの英語サイトの和訳記事の内容を編成し直しています。
そのため項目があちこち移動していますが、内容自体は以前とあまり変わりませんので、何卒ご了承ください。

このページでは、『What pianists say』という項目の和訳記事を掲載しています。

※ この翻訳文の元となる英語サイトの更新に伴い、翻訳文も2017年4月27日に更新しました。




What pianists say
ピアニストたちの言うこと

Adjustment and swapping between keyboards
適応および鍵盤同士の交換

Technical ease
技術上の弾き易さ

Effective practice and speed of learning
効果的な練習および習得の速さ

Pain and injury
痛みや傷害

Musical differences
音楽上の違い

Memorisation and sight-reading
暗譜および初見演奏

Repertoire
レパートリー

Overall comfort and enjoyment
全般的な心地良さや楽しさ

References
参考文献



キャロル・レオーネ博士(テキサス州、南メソジスト大学)、クリストファー・ドニソン氏(カナダ人ピアニスト)、ロンダ・ボイル氏(メルボルンのピアニスト)によって発表された論文や、北米とオーストラリアの22人のピアニストの調査結果などの様々な情報筋から(現在は通常ESPK(※)と呼ばれている)縮小された鍵盤を使っているピアニストの意見がもたらされています(ボイル、2012年)。

ピアニストや教師からの多くの身の上話を読むには、下部にあるPASK Quotes and Storiesという資料をダウンロードしてください。

より小さい鍵盤の利点についてのこれらの意見の中には少なからぬ一貫性があります。ただ、ただ、ピアニストの反応に最も影響を及ぼすのは、実際の手の大きさと形状でしょう。
極めて小さい手のピアニストにとっては、突然演奏可能になる曲目が広がり、オクターブや大きな和音を遥かに楽に演奏できることが最も劇的な変化の1つです。

レオーネ氏、ドニソン氏およびその他が公表している意見と、22人のピアニストの調査結果(ボイル、2012年)は一致しています。
回答者は記載されている22人の技能の多くで改善を報告しています。
以下において『劇的な』または『かなりの』改善を彼らが報告する場合がほとんどでした。

  • 思い通りに音符を押し続けられること
  • 必要な力の感覚
  • 高速でのオクターブや大きな和音のパッセージ
  • 技術的に難しいパッセージを習得するのにかかる時間

回答した人たちの50%以上が、改善の程度を『かなり』または『劇的』と認識した他の技能は以下の通りです。

  • 跳躍進行(次の音階が3度以上開いていること。)
  • レガート奏法
  • 分散オクターブ
  • 分散和音(アルペジオ)
  • 手の位置変更
  • 新しい曲目を習得するのにかかる時間
  • ぎこちないか理想的でない運指法
  • 正確さ
  • 全般的な安心感
  • バランス

この調査では、やや大きい手(7.5インチ(19cm)~8インチ(20.3cm))の人たちと比べると、最も小さい手(7.5インチ(19cm)未満)のグループの中では認識される改善に有意差は見つかっていません。

女性の平均に近い手のスパンのピアニストにとっては、例えばレガート奏法の改善、音楽的傾向および表現法など、変化がより分かりにくいのかもしれません。
初めて10度を演奏できるピアニスト、このグループもまた、ラフマニノフや他のロシアの作曲家、ラヴェルによる作品、そして演奏するために事実上大きなスパンを必要とする上級のショパンリストの作品などのような、通常は男性ピアニストの領域の曲目に取り組むことができることに気付きます。

2011年のオーストラレーシア・ピアノ教育学会議で代表者が試弾するために、DS5.5®(7/8)鍵盤ウォルターのアップライトピアノが提供されました。
それを演奏した人たちのほとんどがほんの15分間弾いただけだという事実にもかかわらず、8インチ(20cm)以上の手のスパンの男性を含め、弾き心地が良いと感じられるだけ演奏した全ての人が、特定の技能がより簡単であることに気付きました。
『オクターブ・パッセージ』および『バランスやボイシング』がより容易だということが最もよく指摘されています。
2013年と2015年のオーストラレーシア・ピアノ教育学会議ではカワイ15/16鍵盤GM12グランドピアノが利用でき、それを試弾している代表者たちは、標準鍵盤から慣れるのに必要な時間が最低限であることに気付いています。

2015年の会議でのカワイGM12を用いたリサイタルとパネルディスカッションに、メルボルンのトップ・プロ・ピアニストの6人が加わりました。
彼らの手のスパンは7.1(約18cm)~9.2インチ(約23.4cm)の範囲で、より小さいサイズの鍵盤に練習時間をほとんどかけませんでした。
彼らが選んだ作品に対し、全てのピアニストが15/16鍵盤で演奏した際に利点を発見しています。最もスパンが小さい人たちにとって、その利点は深く広範囲に及び、最も手が大きい男性たちのためにあるにもかかわらず、例えばラフマニノフのエチュードなどにある大きな和音のボイシングはもちろん、(9度や10度の)大きな音程がはるかに弾きやすいことに彼らは気付きました。
この経験は、9インチ(約23cm)を超えるスパンのものなどの少なくともいくつかの曲目に対して、より小さい鍵盤が非常に大多数のピアニストに恩恵をもたらすことを示唆しています!
それはまた、ラフマニノフヴァイングレインジャーリストといった一部の非常に大きな手の男性作曲家によって書かれた曲目が多くの人にとって近づき難く、『平均的な』手の男性ピアニストでさえも、キーの幅が狭い鍵盤を使うことで彼らの作品のいくつかをより上手く演奏できるということを示しています。

ESPK - Ergonomically Scaled Piano Keyboard(人間工学的にスケーリングされたピアノ鍵盤)

 
Adjustment and swapping between keyboards
適応および鍵盤同士の交換

このような問題に関する一般的な先入観を、以下の初期の適応や鍵盤同士の交換についての意見が打ち消しています。

『この鍵盤に適応するには数日から数週間はかかるかもしれないというのが私たちの予想でした。実際は、ピアニストにかかるのはほとんどの場合1時間未満だということに私たちは気付きました。』

『私がそうであるように、普段から両方の鍵盤のサイズを演奏する人たちは2台の自家用車を運転する場合とほとんど変わらず馴染んでいます。オルガン奏者やハープシコード奏者は普段から何の問題もなくこの現象に対応し、ビオラを演奏するバイオリン奏者もまた、同じタイプの二重能力を経験しています。』
キャロル・レオーネ博士(Dr. Carol Leone)。米国テキサス州ダラス、南メソジスト大学メドウズ芸術学校、鍵盤学科長、2003年。

『新しい鍵盤での最初の試し弾きではオクターブを行き過ぎることとなりましたが、この癖は30分ほど後には遥かに軽減しました。私は1時間のうちに弾き心地がかなり良いと感じ、あまり苦労せずに既存のレパートリーを演奏することができました。細めの黒鍵は問題にはなりませんでした。現在、私はいくつかのレパートリーで、以前は省略していた音符を演奏したりより適切な運指法が使えたりしています。通常そうであるようにこれらのような変化をもたらすとき、そのような変化で安定してくるにはごくわずかな練習時間しか必要ありません。』
ロンダ・ボイル(Rhonda Boyle)、オーストラリア、メルボルン、2009年。

より小さな鍵盤に対して弾き心地が良いと感じるのに必要な時間は人によって異なります。
かなりの人たちにおいて、適応はほぼ即時です。それは手のサイズとの関連はないものと思われます。
手の大きな男性ピアニストの中には極めて短時間に適応する人も見られました。

ピアニストは、小さい鍵盤のもので実質的な練習をしながら『普通の』ピアノでもきちんと弾きこなすのは当然難しいだろうと思っていることが多いです。ですが、事実はその逆なのです。
スタインビューラー社のDS5.5®の最初の顧客であるリンダ・グールド氏(Linda Gould)の言うところによれば・・・

『細幅鍵盤で練習すると、実際には大きな鍵盤のピアノは弾きやすくなるのです。(ですが、そうせざるを得ない限り、あなたはもうそうしたいとは思わないでしょう)『自分の手に合った』ピアノを弾くと、ピアニストはとてつもない無意識の緊張を解き放つことができるのです。それは単にピアノに取り組む方法を変えるだけなのです。この新知見が大きな鍵盤に伝えられ、遥かに緊張が少なくより正確な演奏をするのです。届かない音符・・・あなたはそれらを放っておいています。』

 
Technical ease
技術上の弾き易さ

ピアノの技能の広範にわたって改善された技術的な弾き易さは、まさにおおよそ女性の『平均的な』スパンの人たち全体である、非常に小さい手のピアニストによって指摘された最も明白な利点です。

『このようにして、大きな手でピアノを演奏することがどのような感じかという大きな発見が始まりました。それは突然の閃きのようでした。ピアノの学習におけるすべてのタッチやテクニック、そして私がストレスを感じるそれらすべてが100倍弾き易くなりました。』
クリストファー・ドニソン(Christopher Donison)、ミュージック・バイ・ザ・シー(Music by the Sea)、エグゼクティブ芸術監督(Executive Artistic Director)、およびDS鍵盤の共同発明者、カナダ・ブリティッシュ・コロンビア州、1998年、p. 42。

格段な弾き易さの根本的な理由は、以下の手の動きをあまり必要としない、より『手に収まる』音型に関連しています。

『より小さな鍵盤の技術的アプローチは、より小さく、より洗練された動きをもたらし、投げる、転調、交換、そしてほとんどの場合に『飛び回る』ことをあまりしなくなります。』
キャロル・レオーネ博士(Dr. Carol Leone)。米国テキサス州ダラス、南メソジスト大学メドウズ芸術学校、鍵盤学科長、2003年。

手の小さいピアニストは、技術上の改善、格段な容易さ、そして速度を増す可能性に気付きます。
これは、以前は不可能だった和音に届くというような最も明白な目的だけでなく、以下の結果とも関連しています。

  • より大きなスパンに達する高度な箇所において鍵盤や手首に近い指を力む必要がない。
  • 手の位置変えが減少し、記号の付いた運指法の意味が一気に分かる。
  • 和音の連打や、手で掴めず減らしたり省いたりしている音符を覆い隠すためのペダリング。
  • 遥かに安心感のある、跳躍進行や大きく広がったアルペジオ・タイプの音型。
  • よりコンパクトであまり広がらず、遥かに『手に収まる』ところにある和音やオクターブのパッセージ。

 
Effective practice and speed of learning
効果的な練習および習得の速さ

『私は、今は気付いています。思い返せば、私が費やした練習は、私の手のサイズのためにその時間のほとんどが困難を克服しようとして使われていました・・・もしあなたが手のサイズによって課せられている制限を克服しようとすることに時間の90%を費やしているのなら、あなたはその時本当に恵まれない立場にいるのですよ』
クリストファー・ドニソン(Christopher Donison)、ミュージック・バイ・ザ・シー(Music by the Sea)、エグゼクティブ芸術監督(Executive Artistic Director)、およびDS鍵盤の共同発明者、カナダ・ブリティッシュ・コロンビア州、1998年、p. 43。

ピアニストにとっての技術的困難の度合いが大きければ大きいほど、必要とされる練習量は増加します。
これは、技術的な問題により多くの時間が費やされ、音楽的な課題に集中する時間が少なくなるという結果を招くことを意味しています。
以前標準鍵盤で習った作品をより小さな鍵盤で演奏すれば、『手に収まらない』パッセージの『音符を取る』ためだけに、どれくらいの肉体的・精神的な努力が注ぎ込まれていたかがすぐに明らかになります。
この違いは、両手が難しい課題(例えば、ショパンによく見られる、片方の手で高速のオクターブ、そしてもう一方で広範囲のアルペジオ・タイプ)に対処するときに誇張されます。
すぐに、オクターブに届くことだけに重点的に取り組む必要はもう無くなりますが、手の力を抜き、両手で演奏される音楽ラインを形づくることを考える能力があります。
卓越した技術的課題に焦点を合わせた場合、どれだけ練習をしても、優れた音楽的成果を実現するために必要とされるほど音楽的な課題について考えることは簡単には出来ません。

優れたテクニックを維持し、負担を最小限に抑えるためには、手の小さいピアニストは、以下のようにより一層鍵盤を飛び越える必要があります。

『1つの音符から遠くにある音符までジャンプする場合、手の小さい演奏者は、音符を見つけ指で伸ばすのを避けるために腕を使わなければなりません。これは全く正確さのためだけに多くの練習を必要とします。』
ブレンダ・リステン博士(Dr. Brenda Wristen)、米国ネブラスカ州、ネブラスカ大学リンカーン校、ピアノ教育学・鍵盤楽器技能准教授、およびローラ・ディール(Lora Deahl)、テキサス工科大学、ピアノ准教授、(2003年)。

 
Pain and injury
痛みや傷害

縮小した鍵盤を使っているピアニストの多くが、以前は痛みや傷害に苦しんでいました。
ピアニストの調査(ボイル、2012年)で報告されたほとんどすべてのケースで、彼らが変更して以降は以前の問題が消えています。これは、さらに長い時間練習することが可能になることを意味しています。

コメントとしては以下が挙げられます。

痛みや傷害の説明: 『手と腕の痙攣。手には痺れもありました。私の練習時間は減り、楽しみも削がれました。』
7/8鍵盤を使って以降の変化: 『それ以来何事もなく、時間がある時は長時間練習できています。』
総合的な利点: 『私は弾き心地の良さを気に入っていて、ストレス(苛立ち・もどかしさ)も軽くなっています。私はこれが起こり得ることとは思いも寄らなかったので、私への奇跡のように感じています。30年もの演奏の末にこの機会を得たのは素晴らしいことです。そして今は、2時間以上の練習が要求される状況の際、私は痛みを怖がる(心配する)ことはありません。結果として私の自信は大きくなりました。』
エイミー・ケッファバーズ(Amy Keffabers)、米国、ペンシルベニア州。

痛みや傷害の説明: 『腕と手の緊張、無感覚(痺れ)。私は10分以上弾けず、そのため2年間演奏していませんでした。』
7/8鍵盤を使って以降の変化: 『私は遥かに長く弾けて、毎日演奏を続けることができます。私は痛みや演奏時に制限を受けることから挫折(失望)することはありません。』
ジェン・マケイブ(Jen McCabe)、カナダ、オンタリオ州。

 
Musical differences
音楽上の違い

ピアニストによって報告される音楽上の違いとしては以下が挙げられます。

  • レガート奏法の改善とペダルにあまり依存しない音楽ライン。
  • オクターブを滑らかに演奏する技能。
  • 手がより小さくまとめられたことによる力の増加。
  • 和音のボイシングとバランスの改善
  • 音符を正確に叩くことだけに心を注ぐのではなく、音楽的な側面に多くの時間を費やすようになった。

これらのより微妙な改善点の多くは、偉大なピアニストと単に有能な人、言い換えれば、大きなコンクールで優勝して成功を収めた演奏経歴へと進む人たちとそうでない人たちとを区別するものです。

ピアニストの調査対象者からのコメント(ボイル、2012年)としては以下が挙げられます。

「私の7/8鍵盤が取り付けられたときに私が最初にしたことは、ラフマニノフの前奏曲ト短調を演奏してみることでした。私は深いオクターブ和音を作り出すことができる音に驚きました。以前の私の演奏からはそのような音を聞いたことがありませんでした!」

ベートーヴェンの月光ソナタの第1楽章の演奏は特に難しいことではないにもかかわらず、オクターブの広がりを絶えず必要とするので、私は右手での2つの声部を有効に演奏するのにいつも悪戦苦闘していました。7/8鍵盤で作品を演奏したとき、私は『あぁ!これが聞き感じるはずだった状態なのか。』と思いました。嬉しかったです!」

 
Memorisation and sight-reading
暗譜および初見演奏

ピアニストの中には、例えば以下のような暗譜での格段な弾き易さを報告する人もいます。

『私は、私の音楽を暗譜する技能においてそれがもたらした違いに非常に驚きました。より小さな鍵盤では、あらゆることがより自然であまり弾きにくくなかったので、私の手や筋肉がそれらを暗記するのはより容易でした。』
ニコル・ハルトン(Nicole Halton)、米国、ニューヨーク。

5.5(7/8)鍵盤を初めて購入したピアニスト、リンダ・グールド(Linda Gould)氏は以下のようにコメントしています。

『初見演奏には恐らく最も劇的な効果があります。難しい音楽を(特に他の室内演奏者と共に)初見演奏する場合には、パッセージの最も弾き易い演奏方法を考え出す時間はあなたには無く、とにかくそれを切り開くように突き進みます。私が話しているのはブラームスのホルン三重奏曲サン=サーンスのピアノ三重奏曲のことですよ。(www.steinbuhler.com)』

多くの基本的な和音を標準鍵盤では音符を落とさずに演奏できないほどの最も手が小さい人たちにとっては、初見演奏は特に指の間の柔軟性にも乏しい場合に、より劇的な影響を及ぼす可能性があります。
初見演奏をする場合そのようなピアニストは、どの音符を省略するべきか、あるいは、演奏が困難か不可能なパッセージをどううまく避けるかを即決しなければなりません。

 
Repertoire
レパートリー

ピアニストの調査(ボイル、2012年)における22人の回答者のうちの17人は、縮小した鍵盤を演奏しはじめて以降の彼らのレパートリーにおける何らかの変化を報告しています。すべての人が、少なくともいくつかの既存のレパートリーでの改善を報告しました。
ショパンリスト、およびラフマニノフのエチュード、例えば作品53のポロネーズバラードといったその他のショパンのレパートリー、そしてブラームスドビュッシー、およびラヴェルの作品などのロマン派の作品が、初めて取り組むか遥かに容易になっているものとして度々挙げられました。
リンダ・グールド氏(カナダのピアニストでDS™ 5.5 (7/8)鍵盤の最初の購入者)は以下のように言っています。

『かつて私はショパンのエチュードをコンサート・レベルに上げることができませんでした。今ならできます!』

他の人たちは、(内声を保持する必要のある)バッハベートーヴェン、および何人かの20世紀の作曲家と同様に、大きな和音や速いテンポや滑らかな演奏を要求するオクターブのある任意のレパートリーを選びました。
1人はモーツァルトでも安心感の向上を挙げています。

レパートリーの選択に対する制約を表しているのが、南メソジスト大学(テキサス州ダラス)のキャロル・レオーネ博士による以下のこの話です。
『私は昨日、大学院新入生にオーディション・レッスンを行いました。彼女は自分の小さな手に合わせて多くの音符を意図的に省略したにもかかわらず、難易度の高いロマン派の作品をかなり奮闘しながら演奏しました。その後私は、彼女が右腕の手根管、更には神経に慢性的な傷害を抱えている傷ついたピアニストであることを知りました。それから彼女は、特に7/8鍵盤で学ぶためにSMU(南メソジスト大学)に来たことを教えてくれました。それで私たちは7/8のスタインウェイのところへ行くと、彼女は自分の曲の中からのパッセージを全ての音符で完全に弾き始めたのです!彼女は信じられないといった顔で私を見ると突然泣き出し、感情的になってしまった状態を詫び、長い間「ロマン派の曲目を避けるために自分を律しよう」としてきた状況を声高に訴えました。』

 
Overall comfort and enjoyment
全般的な心地良さや楽しさ

小さな鍵盤を使っているピアニストであれば誰でも、より一層の技術上の弾き易さ(手の)張りや緊張の低減、そして技術的な課題に心を注ぐ必要性が減り音楽についてより多く考えるようになること『失敗する(悲しい思いをする)』可能性への不安の軽減、および演奏できる曲目の拡大楽しみ(喜び)の飛躍的な増大をもたらす一因となる全てに意見が一致していることは間違いないでしょう。
より大きな心地良さや技術上の容易さに加えて、失敗や傷害のリスクの低下は、格段な弾き易さや自信にもつながる演奏の質の改善とも密接な関係があります。

『あなたが失っていたものや、生涯を通じて直面していた無駄な困難を見出す旅を始めるには、DS鍵盤を使って少なくとも数日間はみておく必要があります。どの指でも2本の間の距離をただ「広げる」だけのことがもっとずっと重大だということを私が伝えるときには信じてください。』
クリストファー・ドニソン氏(Christopher Donison)からロンダ・ボイル氏(Rhonda Boyle)への電子メール、2006年12月31日。

以下はボイル氏による調査(2012年)のピアニストの1人からです。
『私にとってのあらゆることが改善しました。練習がずっと楽しいです。』

ピアニストの大部分は様々な理由で必ずしもプロのコンサートピアニストになるとは限りませんが、なぜこれほど多くの人が手のサイズだけのために特定の曲目の演奏から不必要に締め出されなければならないのでしょう。
オーストラリアのピアニストのエリカ・ブッカー(Erica Booker)氏は以下のように言います。

『若い頃、私がラフマニノフの協奏曲を演奏したいと思っていると、先生は私に言いました。「イングリッド・ヘブラーはあえてしませんでしたよ!」ロマン派の作品に決して触れることのなかったバロックや古典派のピアニストの1人になる運命であるという私の不安(苦悩・懸念)に対して暗に伝えていたのです!』

 
References
参考文献

Booker, E.(ブッカー・E)(2010年)
Pianos: one size fits all…big adults.(ピアノ: すべての…大柄な大人に合っているサイズ。)
Tempo、Suzuki Talent Education Association of Australia (NSW) Inc., Autumn, 8-9.(テンポ、社団法人スズキ才能教育オーストラリア協会(NSW)、秋、8-9。)
http://www.cicadabay.com/pianos

Boyle, R & Boyle, R.(ボイル・R、& ボイル・R)(2009年)
Hand size and the piano keyboard.(手の大きさとピアノの鍵盤。)
Literature review and a survey of the technical and musical benefits for pianists using reduced-size keyboards in North America.(縮小された鍵盤を使っている北米のピアニストの技術的および音楽的な利点についての文献レビューと調査。)
Proceedings of the 9th Australasian Piano Pedagogy Conference: Expanding Musical Thinking.(第9回オーストラレーシアピアノ教育学会議の議事録: 広がる音楽的思考。)Sydney, Australia.(オーストラリア、シドニー。)
http://www.appca.com.au/2009proceedings.php

Boyle, R.(ボイル・R)(2012年)
The experience of playing reduced-size piano keyboards. A survey of pianists.(縮小されたサイズのピアノ鍵盤を演奏した経験。ピアニストを対象とした調査。)、MTNA e-Journal,April.Music Teachers National Association - 全米音楽教師協会電子ジャーナル、4月。)
http://mtnaejournal.org/publication/?i=108005

Boyle, R.(ボイル・R)(2013年)
The benefits of reduced-size keyboards for smaller-handed pianists: An exploration of biomechanical and physiological factors.(小さい手のピアニストのための縮小した鍵盤の利点: 生体力学的および生理学的要因の探求。)
Proceedings of the 11th Australasian Piano Pedagogy Conference: Opening Doors: The Complete Musician in a Digital Age.(第11回オーストラレーシア・ピアノ教育学会議の議事録: 開放: デジタル時代における完全な音楽家。)
University of Southern Queensland,Toowoomba, 2-6 July 2013.(サザン・クイーンズランド大学、トゥウンバ、2013年7月2~6日。)
http://www.appca.com.au/2013proceedings.php

Donison, C.(ドニソン・C)(1998年)
Small hands? Try this keyboard, you’ll like it.(手が小さい?この鍵盤を試してみてください。あなたはそれを気に入るでしょう。)
Piano & Keyboard, July-August, 41-43.(ピアノ・アンド・キーボード、7月~8月、41-43。)

Donison, C.(ドニソン・C)(2000年)
Hand size versus the standard piano keyboard.(標準のピアノ鍵盤と比較した手のサイズ。)
Medical Problems of Performing Artists, 15, 111-114.(アーティストの医学的問題、15、111-114。)
http://chrisdonison.com/keyboard.html

Leone, C.(レオーネ・C)(2003年)
Goldilocks had a choice.(金髪の人々が選択の権利を持っていた。)
American Music Teacher, June-July, 26-29.(アメリカン・ミュージック・ティーチャー、6月~7月、26-29。)
http://www.steinbuhler.com/GoldilocksFeature.pdf

Leone, C.(レオーネ・C)(2015年)
Ergonomic Keyboards: Size does Matter.(人間工学に基づく鍵盤: サイズが重要(問題)である。)
Piano Professional(ピアノ・プロフェッショナル)、EPTA (UK)(European piano teachers association - ヨーロッパ・ピアノ教師協会)、夏季。
http://www.carolleone.com/ergonomic-keyboards/

Leone, C.(レオーネ・C)(2015年)
Size is Key.(サイズが解決の鍵である。)
Clavier Companion(クラヴィエ・コンパニオン)、Frances Clark Center for Keyboard Pedagogy(鍵盤教育学フランシス・クラーク・センター)、アメリカ、9月/10月。
http://www.cicadabay.com/pianos

Deahl, L. & Wristen, B.(ディール・L、& リステン・B)(2003年)
Strategies for small-handed pianists.(小さい手のピアニストのための戦略。)
American Music Teacher, 52 (6), 21-25.(アメリカン・ミュージック・ティーチャー、52 (6), 21-25。)

Son, Y., & Chesky, K.(ソン・Y、& チェスキー・K)(2014年)
Awareness and attitude of professional keyboard players towards small size keyboards.(小さいサイズの鍵盤に対するプロのキーボード奏者の認識と考え方。)
Poster paper presented at seminar, University of North Texas.(セミナーで発表された広告ビラ、北テキサス大学。)

http://www.steinbuhler.com/html/our_story.html


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pask_quotes_and_stories_jan_2017.pdf
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音楽家の手の専門外来があるそうです。
ご興味のある方はどうぞ。

痛みを招く手の酷使
楽器演奏で高頻度
音楽家外来で治療を



文中でも触れられています、スタインビューラー社の7/8鍵盤(DS-5.5)が取り付けられているウォルター社製のアップライトピアノですが、昨年の11月よりご使用になっている方がタイにいらっしゃいます。
その方から詳しいお話をお聞きしていますので、ご興味のある方はこちらをどうぞ。

http://littlehands782.blog.fc2.com/blog-entry-75.html


確かに、私の手もかなり小さい方(1-5で17.5cmくらい)ですので、曲の難度が上がると指が届かない個所が続出してしまって、その部分をどう攻略しようか悩むことばかりに時間と気をとられている感は否めないですね。
それも曲の習得の一環、ということなのかもしれませんが・・・。
私のような素人には到底できないことなので考えてもみませんでしたが、初見で演奏をしなければならない状況もあるわけですね。
運指やアレンジなどを考える時間が十分にとれない分、手が小さくて指が十分に届かない状態だとかなり不利になりそうな気がします。
最後のレオーネ博士のお話・・・皆様はどのようにお感じになられたでしょうか。


日本でも、数十年前に作曲家の中田喜直さんによって細幅鍵盤の普及活動がなされていたことをご存知の方も多いかと思います。
中田喜直さんが細幅鍵盤ピアノを使われていたことは知られていますが、他にも、豊増昇さん(ピアニストで音楽教育者。日本藝術院会員。戦後すぐにディアパソンの技師の大橋幡岩氏に細幅鍵盤ピアノの製作を依頼。)、坂井百合子さんやKさん(中田喜直さんに賛同し、ご自身の教室に細幅鍵盤ピアノを採り入れられた先生方。)、藤原真喜美さん(中田喜直さんに賛同し、細幅鍵盤ピアノを購入された方。)といった方々のコメントが、中田喜直さんの著書の、『音楽と人生』随筆集の第4章「日本人と、ピアノ」の中で紹介されていますので、抜粋させていただきます。


中田喜直氏のコメント:
『・・・私がピアノの鍵盤の幅を少し狭くした(オクターヴで約1センチ)ピアノを注文して作り、本当のピアノの弾き方がわかった時である。今まで何回練習しても上手く弾けなかった所が、なんでもなく弾けるのである。手首を固くしないで、余裕をもってオクターヴが弾ける。』
『このピアノを弾いて、私は初めてピアノの正しい演奏法がわかり(私は手が小さいから)作曲上にも飛躍的な発展があった。ショパンの使っていたピアノも大体この位だったらしい。』


豊増昇氏のコメント:
『もう十年早く、このピアノに変えていればよかった。』

ピアノ教師、坂井百合子さんのコメント:
『細幅で弾かせると、子どもが無理をしないで自然に楽に弾けるから、音楽の表現力が格段に違っていい演奏をする。』

ピアノ教師、Kさんのコメント:
『カワイで細幅のグランドを作った。弾かせてもらったらこれがとてもいいピアノで、私はいつまでも弾いていたい気分で、これを自分の家に持って行きたいと思った位だった。子ども達も当然、このピアノが好きなようだ。』

細幅鍵盤ピアノの購入者、藤原真喜美さんのコメント:
『・・・念願のピアノが手に入りました。何と弾き易いこと!今までは弾けないものと諦めていた箇所が楽に弾けます。オクターヴや和音の速い進行はもとより、音階すらも少しも肩に力が入らず、Lサイズ(今までのピアノ)の鍵盤で弾くよりもずっと楽々と弾けます。長時間練習しても疲れが半分以下、殊に困難な箇所の反復練習も疲れずに出来ます。腱鞘炎の心配もなくなると思います。故豊増昇氏が、細幅鍵盤に変えられて「もう十年早くすればよかった」と言われたこともなる程とうなづけます。』


私自身はまだ細幅鍵盤を使えていないので、自分の感想を言えないのが残念ですが、日本人外国人関係なく、使われた方々がほとんど同じような感想をお持ちになっているのが興味深いですね。


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